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【今回のワイナリーは…】
マルク テンペ / Marc Tempé
【生産者は、こちらの方…】
マルク テンペ / Marc Tempé
アルザスの第二の都市コルマール…アルザス ワインの中心の街。
南仏モンペリエからTGV(超高速列車)で5時間の距離、約700kmという長距離を車で走り抜けてきた。
コルマールの市街地に入ると、パステル調の塗り壁に木骨組みの家々が並び、街のあちこちに花が咲き乱れ美しい。
ジブリ映画「ハウルの動く城」のモデルになった、いかにもアルザスらしいこの街並みは、まるでおとぎの国のようだ。
私は、アルフォンス ドーデの本「最後の授業」くらいでしか、この土地の悲しい歴史を知らないけれど、明らかにこれまで巡ってきたフランス流の街とは異質な、ドイツ的な美意識や文化的な影響が感じられた。
市街地を離れ、一面ブドウ畑の明るい緑のなかを走る。車のなかまで薄緑に染まるようで、私は自然に陽気な気分になった。
なだらかな丘の起伏に、まるでパッチワークのように不規則で美しい緑のパターンが広がり、その真ん中に絵に描いたような愛らしい小さな村が点在する。
この年の私の旅もそろそろ終焉に近づいてきた。
小さな集落に入り速度を落とすと、見覚えのある大きな背中が前を歩いていく。最後の目的地であるワイン蔵の当主マルク テンペ、その人だった。
車を降りて、再会を喜びあう。
「ほら、見てごらんよ。祝福のコウノトリだ」
屋根のうえで、羽を広げ到着を喜んでいるかのようなその鳥の存在は、私の興奮に拍車をかけた。
到着の喜びと興奮、運転の疲れを癒すために、ブドウ畑に出て、テンペとともにゆっくりと歩く。そして深く息を吸った。