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宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞…向田邦子さんのエッセイ『父の詫び状』を読みながら、幼い頃、うちにもあった家族団らんの風景を思い出した。
食卓を囲んで、1日の出来ごとを語らいながら、家族全員でご飯を食べる。
うちは祖父母も同居する三世代家族。
厳しい祖父が食卓の上座に鎮座して、目を光らせていた。
姉弟で喧嘩をしたあとは、祖父の雷が落ちないかとビクビクしながら沈黙の夕飯を食べる。
「いただきます。
ご馳走さまの食べものへの感謝と挨拶をきちんということ。
口を開けて食べない」など、食事の作法を厳しく躾けられたのも家族の食卓。
そして、おかずばかり食べていると「ご飯を食べて、おかずを食べて、汁物を飲む。
この順番でゆっくり噛んで食べなさい」と、母から口うるさく注意された。
厳しくも温かい家族の団らん。
今思えば、向田邦子の大家族ホームドラマそのものが、あちこちの茶の間で繰り広げられていた。